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2011.02.07 ROMAN


折角なので、ROMANの方ものせてみようと思います。



やっぱりおもしろいですね。




〈ROMAN〉




1【朝と夜の物語】



生まれて来る朝と 死んで行く夜の『物語』(Roman)(Laurant)
嗚呼 僕達のこの寂しさは 良く似た色をした『宝石』(pierre)

生まれて来る意味 死んで行く意味 君が生きている『現在』(いま)

11文字の『伝言』(message) 幻想『物語』(Roman) 『第五の地平線』

「Roman」

「其処にロマンは在るだろうか?」

泣きながら僕達は来る 同じ苦しみを抱きしめて
笑いながら僕達は行く 遙か地平線の向こうへ
廻り合う君の唇に 嗚呼 僕の詩を灯そう『人生』(La vie)

いつの日か繋がる『物語』(Roman)

泣きながら僕達は来る 同じ哀しみを抱きしめて
笑いながら僕達は行く 遙か地平線の向こうへ
廻り逢う君の唇に 嗚呼 僕の詩を灯そう 『人生』(La vie)

僕達が繋がる『物語』(Roman)

生まれて来る朝と 死んで行く夜の『物語』(Roman)(Laurant)
嗚呼 僕達のこの刹那さは 良く似た色をした『美花』(fleur)

太陽の風車 月の揺り籠 彷徨える『焔』の『物語』(Roman)
壊れた人形 骸の男 時を騙る『幻想』の『物語』(Roman)

『右腕には菫の姫君』
(C'est mademoiselle violette,qui est dans la main droit)

『そして 左腕には紫陽花の姫君』
(Et C'est mademoiselle hortensia,qui est dans la main gauche)

嗚呼 僕の代わりに廻っておくれ
其の世界には 僕が生まれてくるに至る『物語』(Roman)はあるのだろうか?

「さぁ いっておいで」
「oui, monsieur」

廻り来る生の騒めき 太陽の風車
廻り行く死の安らぎ 月の揺り篭

我等は彷徨える 追憶に揺れる『風車』(moulinvent)
廻り行く何の地平にも 詩を灯すでしょう

此れは

生まれて来る前に 死んで行く『僕』(Laurant)の『物語』(Roman)(Laurant)
嗚呼 僕達はもう逢えなくても 現在を生きて往く『憧憬』(Roman)

詠い続けよう → 君が迷わぬように

『朝と夜』の狭間
『焔』の揺らめき
『宝石』を掴もう
『腕』を伸ばし
『風車』は廻れば
『星屑』は煌めき
『天使』が別れし
『美しき』の幻想を
『葡萄酒』の陶酔(ゆめ)に
『賢者』も忌避する
『伝言』の真意
『地平線』は識る

右手の死を 左手の生を 傾かざる冬の天秤

「其処にロマンは在るのかしら?」
「其処にロマンは在るのだろうか?」
「其処にロマンは在るのかしら?」

「嘘を吐いているのは誰か?」




2【焔】



幾許かの平和と呼ばれた光 其の影には常に悲惨な争いがあった
葬列に参列する者は 皆一様に口数も少なく
雨に濡れながらも 歩み続けるより他にはないのだ

瞳を閉じて『暗闇』(やみ)に 吐息を重ねる
そっと触れた温かな光は 小さな鼓動
『否定接続詞』(Mais)(メ)で綴じた『書物』(かみ)が 歴史を操る
そっと振れた灼(あらた)かな光は 誰かの『焔』

気付けば道程は 常に苦難と共にあった
耐えられぬ痛みなど 何一つ訪れないものさ

歓びに咽ぶ白い朝 哀しみに嘆く黒い夜
我等が歩んだ此の日々を 生まれる者に繋ごう

瞳に映した蒼い空 涙を溶かした碧い海
我等が愛した此の世界(ばしょ)を 愛しい者に遺そう

嗚呼 朝と夜は繰り返す 煌めく砂が零れても
嗚呼 朝と夜は繰り返す 愛した花が枯れても
嗚呼 朝と夜は繰り返す 契った指が離れても
嗚呼 朝と夜を繰り返し 『生命』(ひと)を廻り続ける

美しい『焔』(ひかり)を見た 死を抱く暗闇の地平に
憎しみ廻る世界に 幾つかの『愛の詩』を灯そう

何れ程夜が永くとも 何れ朝は訪れる

独りで寂しくないように 『双児の人形(ふたごのla poupée)』を傍らに
小さな棺の揺り籠で 目覚めぬ君を送ろう

歓びに揺れたのは『紫色の花』(violet) 哀しみに濡れたのは『水色の花』(hortensia)
誰かが綴った此の詩を 生まれぬ君に贈ろう

歴史が書を創るのか 書が歴史を創るのか
永遠を生きられない以上全てを識る由もなく
朝と夜の地平を廻る 『第五の旅路』
離れた者が再び繋がる日は 訪れるのだろうか?

懐かしき調べ 其れは誰の唇か 嗚呼 『物語』(Roman)を詩うのは

「其処にロマンは在るのかしら?」




3【見えざる腕】



眠れぬ宵は路地裏の淫らな『牝猫』(Chatte)に八つ当たりして
嗚呼 見えざるその腕で首を絞める
『夢幻影』(Fantome de reve)壊れゆく『自我』(Ego)の痛み

狂えぬ酔いは屋根裏の『小さな居城』(Chateau)を転げ回る
嗚呼 見えざるその腕の灼ける痛み
『幻肢痛』(Fantome de douleur)安酒をあびて眠る

「アルヴァレス将軍に続け!」

黄昏に染まる古き獣の森に 戦場で出会った二人の男
金髪の『騎士』(Laurant) 赤髪の『騎士』(Laurant)
争いは廻り 屍を積み上げる
加害者は誰で被害者は誰か?
斜陽の影に刃は緋黒く煌めいて

片腕と共に奪われた『彼の人生』(Sa vie)
仕事は干され恋人は出ていった
何もかも喪った奪われた『最低な人生』(La vie)
不意に襲う痛みに怯える暮らし

「『大抵の場合』(Le plus, souvent) 貴方はうなされ殴るから
 私は この侭じゃ何れ死んでしまうわ
『さよなら』(Au Revoir)貴方を誰より愛してる
 それでも お腹の子の良い父親(Pere)には成れないわ」

『葡萄酒』(Tu Fine)
『発泡葡萄酒』(Tu Champagne)
『蒸留葡萄酒』(Tu Eau De Vie)

嗚呼 眠りの森の静寂を切り裂き また奴が現れる

馬を駆る姿 正に悪夢 赤い髪を振り乱して 振う死神の鎌
首を刈る姿 正に風車 緋い花が咲き乱れて 奮う精神の針 闇を軽るく纏った

夢から醒めた現実は 其れでも尚も悪夢の中
故に 其の後の彼の人生は 酒と狂気 廻る痛みの中
左の頬に十字傷 赤く燃える髪の鳶色の瞳

奴を 殺せと腕が疼くのだ 『見えざる腕』が疼くのだ
誰が加害者で 誰が被害者だ 死神を捜し葬ろう

「殺してくれる!!」

『騎士』(Chevalier)は再び馬に跨がり 時は黙した世界を移ろう
異国の酒場で再び出逢った『二人の男』(Laurant)

隻眼にして隻腕 『泥酔状態』(アルちゅう)にして『陶酔状態』(ヤクちゅう)
嗚呼 かつての蛮勇 見る影も無く

不意に飛び出した 男の手には『黒き剣』(epee noire)

「退け」

周囲に飛び散った『液体』(sang) 
まるで『葡萄酒』(pinot noir)

「なにもんだキサマ・・・ んっぐああああ」

刺しながら 供された手向けの『花の名』(nom) 『こんばんわ』(bon soir)

「『こんばんわ』(bon soir)」

抜きながら 灯された詩の名『さようなら』(au revoir)

「『さようなら』(au revoir)」

崩れ落ちた男の名は『Laurant』 走り去った男の名は『Laurencin』
もう一人の『Laurant』は 唯 呆然と立ち尽くしたまま

誰が加害者で 誰が被害者だ 犠牲者ばかりが増えてゆく
廻るよ廻る 憎しみの風車が 躍るよ躍る 焔のように
嗚呼 柱の陰には少年の影が 鳶色の瞳で見つめていた

「人生は儘にならぬ されどこの痛みこそ 私の生きた証なのだ」

復讐劇の舞台を降ろされ 男は考えはじめる
残された腕 残された人生 見えざるその意味を
杯を満たした葡萄酒 その味わいが胸に沁みた

「其処にロマンは在るのかしら?」




4【呪われし宝石】


「へますんじゃねぇぞ、Laurencin」
「はっ、おまえこそな、Hiver」

母なる大地が育んだ奇蹟 世界最大と謳われし貴石 
『30ctの赤色金剛石』(trente carat,diamant rouge)
所有者を変え渡り歩いた軌跡 特典は予約済みの鬼籍 
『30ctの殺戮の女王』(trente carat,Reine Michèle)

鎖された『硝子』(verre) 優雅に眠る『宝石』(pierre) 過ぎ去りし日の夢の中
厳格なる『幻喪』(deuil) 傳かざる『矜持』(orgueil) 死神さえも腕の中
『彼女』こそが『女王』(reine) 抗う者は皆無 檻の外へは逃がさない

狡猾な『少女』(fille) 影と踊った『老婆』(vieille) 幾つもの首を彩った
派手な『娼婦』(courtisane) 泥に塗れた王妃 幾つもの首を刈穫った
廻り巡る『情景』(scène) 色鮮やかな幻夢 喪うまでは逃がさない

【祝い】が【呪い】に変わる 運命の皮肉
『彼女』の誕生にまつわる 知られざる『物語』(Roman)

男は掘った 薄暗い穴を 墓穴と知らずに
男は掘った 奈落へと至る 洞穴と知らずに

鎖された闇の中で 『運命』(とわ)に抱かれ 寝食さえも忘れて 掘った
灯された詩の中で 躍るように 侵蝕された歯車 『斯くて狂ったように廻り』(Et il tourne follement)

男を誘う不思議な霧
眼前に現れたのは かつて見た事の無い美しき原石
その魔力に引き寄せられるかのように 男は震える手を伸ばした

【幸運】(bien chance) 嗚呼 これまで苦労をかけた 可愛い『妹』(Noël)よ
【幸運】(bien chance) 嗚呼 これなら胸を張って 送りだせよ

← 欲に眼が眩んだ『鉱山』(mine)の『管理者』(concierge) ←
← 眼の色を変えた鷲鼻の『宝石商』(commerçant) ←
← 我が眼を疑った隻眼の『細工職人』(artisan) ←
← 廻るよ廻る 『死神』(Dieu)の『回転盤』(roulette) →

堅牢に見える倫理の壁にも 時に容易に穴が空く

【不運】(malchance) 嗚呼 帰らぬ兄を待ってる 嫁けぬ妹
【不運】(malchance) 嗚呼 変らぬ愛を待ってる 冬の夜空

「もう Hiverお兄様」

頬杖 溜め息 人形師の娘 窓辺に佇む『双児』(ふたご)の人形

「はあ いつお戻りになるのかしら?」

鎖された『硝子』(Verre) 優雅に眠る『宝石』(pierre) 過ぎ去りし日の夢の中
忍び寄るの『影』(ombre) 溶け込む緋の『闇』(tenebres) 盗賊達は部屋の中
失敗をすれば『刑罰』(peine) 命を懸けた任務 狙った獲物は逃がさない

「やばい ずらかるぞ!」
「おい 待ってくれよ!」

白馬に乗らず『王子』(prince) 些か乱暴な『接吻』(bise)
嗚呼 『彼女』が再び世に解き放たれる

母なる大地が育んだ奇蹟 世界最大と謳われし貴石
『30ctの赤色金剛石』(trente carat,diamant rouge)

所有者を変え渡り歩いた軌跡 特典は予約済みの鬼籍
『30ctの殺戮の女王』(trente carat,Reine Michèle)

「其処にロマンは在るのかしら?」



5【星屑の革紐】



『こんにちわ、はじめまして!』(Salut, enchanté!)
差し出した手を 嗚呼 『可愛い私のお姫様』(étoile)
小さな小指で懸命に握り返してくる
あなたの歩む道程が 輝くように『星』(étoile)と

ある雨の朝 いつものように少女が目を覚ますと
『寝具』(ベッド)の横には優しい父親 そして大きな黒い犬が居た
雨の匂い くすぐったい頬 どこか懐かしい温もり
小さな姉と大きな妹 二人と一匹 家族となった特別な朝

嗚呼 私は星を知らない 遠過ぎる光は届かないから
嗚呼 僅かな視力でさえも 何れ失うと告げられている

『ごめんなさい お母さん この名前』
(Excusez-moi ma mère ce nom)
『どうしても好きになんてなれないよ』
(Je ne peux pas, c'est absolument de m'aimer)
『嗚呼 ごめんなさい』(Ah excusez-moi) 勇気を出して

嗚呼 『愛犬』(Pleut)と屋外へ出たけど 歩く速度が抑違うから
嗚呼 暗闇に沈む世界では ちょっとした段差でも転んでしもう

『ごめんなさい 父さん この両眼』
(Excusez-moi mon père ces yeux)
『どうしても好きになんてなれないよ』
(Je ne peux pas, c'est absolument de m'aimer)
『嗚呼 ごめんなさい』(Ah excusez-moi)

細い『革紐』(harnais)じゃ 心までは繋げないよ
『愛犬』(Pleut)が傍にいたけど 私は孤独だった

別々に育った者が 解り合うのは難しい
ましてや人と犬の間であれば 尚更の事である
それからの二人は 何をするにも何時も一緒だった
まるで 空白の時間を埋めようとするかのように

姉は甲斐甲斐しく妹の世話を焼き 妹は姉を助けよく従った
父の不自由な腕の代わりになろうと 何事も懸命に

其れは 雨水が大地に染む込むようにしなやかなに
根雪の下で春を待つように 小さな花を咲かせるように

急に吹いた『突風』(rafale)に手を取られ『革紐』(harnais)を離したけど
もう何も怖くなかった 『見えない絆』(星屑のharnais)で繋がっていたから

弱い姉だ それでも嗚呼 ありがどうね
『妹』(Pleut)が傍にいたから 私は何処へだって往けた
大好きだよ 『妹』(Pleut)が傍にいたから 私は強くなれた

星空に抱かれて夢を見た あなたが産まれてきた朝の追憶を
銀色に輝く夢の中 零れた砂が巻き戻る幻を

嗚呼 何のに遣って来たのか 最期に判って良かった

忘れないよ 君と歩いた 暗闇に煌めく世界を
いつだって 嗚呼 人生は星屑の 輝きの中に在ることを
(忘れないで 母と歩いた 苦しみに揺らめく世界を
 いつだって 嗚呼 母は星屑の 瞬きの中に在ることを)

祈りの星が降り注ぐ夜 → 『黒犬』(Pleut)は静かに息を引き取った
悼みの雨が降り注ぐ朝 → 冷たくなった彼女の腹から取り出されたのは
光を抱いた小さな温もり → 黒銀の毛並みを持つ子犬だった

そして『物語』(Roman)の翼は地平線を軽々と飛び越えるだろう
やがて懐かしくも 美しきあの『荒野』を駈け廻る為に

「其処にロマンは在るのかしら?」



6【緋色の風車】


廻る回る『緋色の風車』(Moulin Rouge)綺麗な花を咲かせて
躍る踊る『血色の風車』(Moulin Rouge)綺麗な花を散らせて

小さな掌に乗せた硝子細工
其の宝石を『幸福』(しあわせ)と謳うならば
其の夜の蛮行は時代にどんな爪痕を遺し
彼等にはどんな傷痕を残したのか

運命に翻弄される弱者の立場に嘆いた少年は
やがて『力』を欲するだろう

其れは 強大な力から身を守る為の『楯』か?
其れとも より強大な力でそれをも平らげる『剣』か?

何が起こったのか良く解らなかった
泣き叫ぶ『狂乱』(Lune)の『和音』(Harmonie) 
灼けた屍肉の『風味』(Saveur)

何が襲ったのか 良く解らなかったけど
唯 ひとつ 此処に居ては 危ないと判った

僕は一番大切な『宝物』(もの)を
持って逃げようと → 君の手を掴んだ

嗚呼 訳も解らず息を切らせて走っていた二人
欲望が溢れだすままに暴れて奴等は追い掛けてくる

星屑を辿るように 森へ至る闇に潜んだままで

訳も解らず息を殺して震えていた二人
絶望が溢れだすことを怖れて強く抱き合っていた

不意に君の肢体が宙に浮かんだ →

怯え縋るような『瞳』(め)が ← 逃げ出した僕の背中に灼きついた

狂おしい『季節』を経て 少年の『時』は流転する

廻る回る『緋色の風車』(Moulin Rouge)灼けつく『刻』を送って
躍る踊る『血色の風車』(Moulin Rouge)凍える『瞬間』を迎えて

嗚呼 もし生まれ変わったら 小さな花を咲かせよう
ごめんね 次は逃げずに 君の傍で共に散ろう

「Moulin Rouge」

「其処にロマンは在るのかしら?」



7【天使の彫像】



後の世に【神の手を持つ物】
と称される彫刻家『Auguste Laurant』

戦乱の最中に失われ 平和と共に姿を現したとされる
未だ神秘の薄布に包まれた彫像 彼の稀代の傑作
『天使』(Angel)に秘められし 知られざる『物語』(Roman)

「物言わぬ冷たい石に『生命』(いのち)を灯せる等と 俗人達が謳うのは 唯の驕りに過ぎぬ
 在る物を唯在る様に 両の手で受け止めて 温もりに接吻けるように 想いを象るだけ」

『風車小屋』(Moulin à vent) 空を抱いて 廻り続ける丘の上
『工房』(atelier)は他を拒むように 静かに佇む影
彼は唯独りで描いた 我が子の『表情』(かお)も知らずに

【足りないのは小手先の『素描力』(dessin)ではない 現実をも超える『想像力』(imagination)】

「嗚呼 光を 嗚呼 もっと光を 『即ち創造』(création) 憂いの光を」

生涯逢わぬと誓いながら 足げく通う『修道院』(monastère)
子供達の笑い声 壁越しに聴いている

「君の手が今掴んでいるであろう その『宝石』(いし)はとても壊れ易い
 その手を離してはならない え何が襲おうとも」

彼は日々独りで描いた 我が子の『笑顔』(かお)も知らずに

【必要なのは過ぎし日の『後悔』(regret)ではい 幻想をも紡ぐ『愛情』(affection)】

「嗚呼 光を 嗚呼 もっと光を 『即ち贖罪』(expiation) 救いの光を」

如何なる賢者であれ 零れる砂は止められない
彼に用意された銀色の砂時計 残された砂はあと僅か

母親の灯を奪って この世に灯った小さな『焔』
その輝きを憎んでしまった 愚かな男の最期の悪足掻き
想像の翼は広がり やがて『彫像』の背に翼を広げた

「嗚呼 もう想い遺すことはない やっと笑ってくれたね」
「もういいよ パパ」

「其処にロマンは在るのかしら?」



8【美しきもの】



君の大好きなこの『旋律』(mélodie) 大空へと響け『口風琴』(harmonica)
天使が抱いた窓枠の『画布』(toile) ねぇ その『風景画』(paysage) 綺麗かしら?

『其れは』(C'est)
風が運んだ淡い花弁 春の追想
綺麗な音唄う『少女』(Monica) 鳥の囀り 針は進んだ →

『其れは』(C'est)
蒼が繫いで流れる雲 夏の追想
綺麗な音謡う『少女』(Monica) 蝉の時雨 針は進んだ →

綺麗だと 君が言った景色 きっと忘れない
「美しきもの」集める為に 『生命』(ひと)は遣って来る

君が抱きしめた短い『季節』(saison) 痛みの雨に打たれながら
「心配ないよ」笑って言った 君の『様相』(visage)忘れないよ

『其れは』(C'est)
夜の窓辺に微笑む月 秋の追想
綺麗な音 詠う『少女』(Monica) 虫の羽音 針は進んだ →

『其れは』(C'est)
大地を包み微眠む雪 冬の追想
綺麗な音 詩う『少女』(Monica) 時の木枯 針は進んだ →

綺麗だね 君が生きた景色 ずっと忘れない
「美しきもの」集める為に 『生命』(ひと)は過ぎて行く

君が駈け抜けた眩い『季節』(saison) 病の焔に灼かれながら
「嗚呼 綺麗だね」笑って逝った 君の『面影』(image)忘れないよ

君が生まれた朝 泣き虫だった私は 小さくても姉となった

嬉しくて 少し照れくさくて とても誇らしかった
苦しみに揺蕩う『生存』(せい)の荒野を 「美しきもの」探すように駈け抜けた
果てしなき地平へ旅立つ君の寝顔 何より美しいと思ったよ

君の大好きなこの『旋律』(mélodie) 大空へと響け『口風琴』(harmonica)
天使が抱いた窓枠の『画布』(toile) ねぇ その『風景画』(paysage) 綺麗かしら?

「わたしは 世界で一番美しい『焔』(ひかり)を見た
 その花を胸に抱いて Laurantの分も 詠い続けよう」

「其処にロマンは在るのかしら?」




9【歓びと哀しみの葡萄酒】



其れは 歓びに揺らぐ『焔』 哀しみに煌めく『宝石』
多くの人生 多くの食卓に 彼女の『葡萄酒』(vin)があった

横暴な運命に挑み続けた女性「Loraine de Saint - Laurent」
大地と共に生きた彼女の半生 其の知られざる『物語』(Roman)

嗚呼 彼女は今日も畑に立つ 長いようで短い『焔』
得たモノも喪ったモノも 多くが通り過ぎた

嗚呼 『季節』(saison)が幾度廻っても 変わらぬ物が其処に在る
優しい『祖父』(grand-père)の『使用人』(employé) 愛した彼との『葡萄畑』(climat)

嗚呼 追想はときに ほの甘く 熟した果実を もぎ穫るような『悦び』(plaisir)

嗚呼 『葡萄樹』(vigne)の『繊細』(délicat)な剪定は 低温で少湿が理想
『造り手達』(vigneron)の気の早い春は 『守護聖人の祭』(Saint Vincent)の後に始まる

嗚呼 無理な『收量』(quantité)を望めば 自ずと『品質』(qualité)が低下する
『一粒』(un grain) 『一粒』(et un grain)に充分な『愛情』(amour)を それが親の役割

嗚呼 追想はときにほろ苦く 傷した果実を もぎ穫るような『痛み』(peine)
嗚呼 女は政治の道具じゃないわ 愛する人と結ばれてこその『人生』(la vie)

されど それさえ侭成るぬのが『貴族』(noble) そんな『世界』(もの)捨てよう

「残念だったネエ」

権威主義を纏った『父親』(pèr) 浪費する為に嫁いで来た『継母』(mère)
名門と謂えど 派手に傾けば没落するのは早く

斜陽の影を振り払う 『伯爵家』(Les Comte) 最後の『切り札』(carte) 娘の婚礼
嗚呼 虚飾の婚礼とも知らず 『継母』(おんな)の『宝石』が『赤』(rouge)の微笑を浮かべた

地平線が語らざる詩 大切なモノを取り戻す為の 逃走と闘争の日々
その後の彼女の人生は 形振り構わぬものであった

私はもう誰も生涯愛さないでしょう 恐らく愛する資格もない
それでも誰かの『渇き』(soif)を潤せるなら この身など進んで捧げましょう

『樫』(chene)の樽の中で 眠ってる可愛い『私の子供達』(mon enfant)
ねぇ どんな夢を見ているのかしら?

『果実』(pinot)の『甘み』(Sucre)
『果皮』(tanin)の『渋み』(astringence)
愛した人が遺した『大地の恵み』(terroir)
『歓び』(joie)と『哀しみ』(changrin)が織り成す『調和』(harmonie)
その味わいが『私の葡萄酒』(mon vin)

『そして それこそが人生』(et C’est la vie)

「其処にロマンは在るのかしら?」



10【黄昏の賢者】



彼の名は『賢者』(Sage)
正確にはその呼び名も通称 本名は全く以って不詳

私が初めて彼と出逢ったのは ある春の日の黄昏 寂れた郊外の公園だった

『今晩和』(Bon soir)

「Mademoiselle そんな浮かない顔をして 何事かお悩みかな?
先ほどから君がその噴水の周りを廻った回数は11回
歩数にしておおよそ704歩 距離にして実に337メートル
愚かな提案があるのだが どうだろう?私で良ければ 君の話し相手になりたい」

まずは誰もいない → 其れが『零』(zéro)だ
其処に『私』(moi)が現れた → 其れが『壱』)un)だ
そして『君』(toi)が現れた → 其れが『弐』(deux)だ
単純な『数式』(しき)にこそ ← 真理が宿る

そんな容易なことにさえ自らを閉ざして 気付けない時もあるのだ

『やぁ 御機嫌よう』(Salut)

「Mademoiselle,先日の悩み事に対する解答は出たのかな?
君と別れてから今日で丁度一週間
時間にして168時間 分にして10080分 秒にして604800秒
と言っている間にも 23秒が過ぎてしまった 今日も君の話し相手になりたい」

朝と夜との『地平線』(horizon) → 其れは『弐』(deux)だ
時の『王』(roi)が眠る墓所 → 其れは『参』(trois)だ
煌めく永遠の星屑 → 其れは『伍』(cinq)だ
単純な『素数』(かず)にさえ ← 真理は宿る

どんな容易なことにさえ自らを閉ざして 気付けない事もあるのだ

君の哀しみを『因数分解』(ばら)してみようか? 幸福の最大公約数(かず)を求めてみようか?
涙を拭って さぁ お立ちなさい 君の途はまだ続くのだから

『なるほど』(En effet)

産むべきか ←→ 産まざるべきか

それが最大の 謂わば問題だ 歓びの朝も 哀しみの夜も 全ては君の物
未見ぬ者へ 繋がる歌物語 詩を灯す『物語』(Roman)

『風車』が廻り続ける度に 『美しき』幻想が静かに紡がれ
(Le moulin rouge La belle chose )

『焔』の揺らめきの外に 『腕』を伸ばす愚かな者達は
(La flamme le bras invisible)

『宝石』をより多く掴もうと 『朝と夜』の狭間を彷徨い続ける
(Le bijou rubis Le conte du matin et de la nuit)

『星屑』の砂の煌めきにも 『葡萄酒』は仄甘い『陶酔』(ゆめ)を魅せ
(Le fragment d'étoiles Le vin rouge joie et pathétique)

『賢者』が忌避する檻の中から 『伝言』の真意を彼等に問うだろう
(Le savant Crépuscule La message d'onze lettres)

『天使』が別れを告げし時 『地平線』は第五の物語を識る
(La statue de l'ange Le cinq Roman)

「繰り返えされる『歴史』は 『死』と『喪失』
『楽園』と『奈落』を廻り 『少年』が去った後 そこにどんな『ロマン』を描くのだろうか?
傷つく事が怖いかね 失う事が怖いかね 信じる事が怖いかね 
だからこそ私は そんな君の話し相手なりたい」

君が来た朝を後悔するなら 更なる痛みを産むべきではない
君が行く夜を肯定するなら その子もまた『人生』(せい)を愛すだろう

『お孃さん』(Chloe) 君の哀しみを『因数分解』(ばら)してみようか?
『幸福』(しあわせ)の『最大公約数』(かず)を求めてみようか?
埃を払って さぁ お発ちなさい 君の旅はまだ続くのだから

『さようなら』(Au revoir)

「Mademoiselle もう心は決まったようだね
 ならば さぁ胸を張ってお行きなさい 君は君の地平線目指して」

「『ありがとう 賢者さん』(Merci, Monsieur Savant)」

「探しだぞ Christophe」

「其処にロマンは在るのかしら?」




11【11文字の伝言】



嗚呼 昨日のことのように憶えています
それは冬の朝 呼び声は温かく手を握り締め
『天使』(Angel)の『金管』(ラッパ)を聴きました

ありふれた人生だったと 我ながらに憶います
それでも アナタを産めたことは『私の誇り』でした
嗚呼 昨日のことのように憶えています

寒い冬の朝 産声は高らかに天を掴み取り
『橙色』(orange)の光を射しました

ついてない人生だったと 我ながらに憶いす
それでも アナタと出逢えたことは『最高の幸運』でした
嗚呼 どんな苦難が訪れても 締めず勇敢に立ち向かいなさい
愚かな母の最期の願いです アナタは『しあわせにおなりなさい』

「ごめんなさい さようなら」
生まれて来る朝 死んで行く夜
君が生きている『現在』(いま) 11文字の『伝言』(message) 
「ごめんなさい ありがとう」
幻想『物語』(Roman) 『第五の地平線』

「嗚呼 其処にロマンは在るのだろうか?」

アナタを産んだのが 誰であれ 本質は変わらない 何一つ アナタが望まれて産まれて来たこと

それさえ忘れなければ いつか繫がれると

嗚呼 傍で歩みを見守れないのが 無念ですが どうか凛と往きなさい
愚かな母の唯一の願いですアナタは「しあわせになりなさい」

アナタが今生きている それが『私が生きた物語の証』(Roman)
この地平線愛してくれるならそ れが『私の幸福』(bonheur)

それが『私の物語の意味』(Roman)

「其処にロマンは在るのかしら?」

生まれて来る意味 死んで行く意味 君が生きている現在(いま)
11文字の『伝言』(message) 幻想『物語』(Roman) 『第五の地平線』

ふたつの風車は 廻り続けるだろう 愛する者と再び 繋がる時間まで
生と死の荒野を流離う人形は 廻り行く夜 どんな詩を灯しただろうか

そして 地平線を統べる銀色の光 今 幾度目かの朝が訪れる

「嗚呼 其処にロマンは在るのだろうか」



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